ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

優しいストロベリーアイスクリーム

目をつぶると、ここひと月の間にみた絵や会った人や、桜がくるくると浮かぶのに、全部が夢のなかのような気がする。

「なんだか、ずっと寝てる気がする」

「いいじゃない。ゆっくりしなよ」

主人がお湯を湧かしてくれる。気がつくと、また夕方になっている。

「さっき、お昼だったのに。。」

月曜、火曜とお休みが2日ある!とわくわくしていたのに、日曜の晩に高熱が出てからあっという間に火曜の夜になってしまった。

「もう、寝るの飽きたの」

主人が笑う気配がする。私はのそのそ布団から出てくる。背中が固くて、肩がこっている。猫のように、全身をのばしていく。でも瞬時にくたびれてしまって、また布団に横になってしまった。

「アイス、食べる?」

アイス!!それは熱で寝ぼけたあたまに、とっても魅惑的な音で美味しそうに響いた。主人が仕事の帰りに買ってきてくれたの。

「食べる!!」

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アイスを置いて、主人はまた仕事に出掛けてしまった。つまんないな、と思うけれど、アイスをとても集中して食べることにした。優しいピンクは口の中でじゅわ、と溶けた。熱があるといつもより溶けるのが早いのかしら。半分くらいまで食べてその作業にちょっと飽きそうになったけれど、パッケージをじいっと見たら、ちゃんとこれを選んで買ってきてくれた主人のことを思って嬉しくなった。それで幸せな気分になって、終わりまで食べました。

それからまたいそいそ布団にもぐって、さっきまで見た夢の続きを見ることにした。熱が下がったら、起きて夢のなかを生きられるのに、熱があるから夢のなかだけでしか遊べない。早く元気にならないかな。起きても主人がいなかったので、食べ終わったあとのアイスの写真を撮って、それからブログを書きました。書き終わってもまだ帰ってこなかったら、また寝ようと思います。

甘いジンジャーシロップ

今日はとっても素敵な女性と、優しい眼鏡の男性とブログのとこについてお話する機会がありました。そのなかで、下書きについて尋ねられて、

「たくさんあるの。書いている途中で、宅配が届いてワクワク包みを開き出してそれきり忘れてしまったり、本当のことを書いているのに『文章にしたら、まるで作り話みたい!』と思ってなんとなくそれきり、になってしまったり」

とお伝えしたら「もったいない!」と言っていただきました。たしかに。。と思って、ちょっと前に書いた下書きの続き、2月のある日のできごとを書きます。

 

1月の中頃から、注文を頂いていた絵をずっと描いていました。まるでぬいぐるみのように、本当に可愛い犬の絵です。お仕事やお家のこと以外ではずっと彼女のことを考えて、毛並みをなぞって描いていたので、何度も夢に出てきたほどでした。ようやく完成に近づいてきたので、嬉しくてはしゃいでいました。

「わーい、とっても可愛い子が出てきた!なでたいな。。うーん、いいかんじ。今日は気分がいいから、ジンジャーエールとか飲みたいな。」

お酒の飲めない私には、ジンジャーエールを買ってきて素敵なグラスに注いで、お菓子とならべて食べるのが至福のひととき。だけど、買うのを忘れていたの。まあ、いいか。と思っていたら(もしかしたら声に出していたかもしれない)、

「またぶつぶつ言ってるね。。うまく描けたならよかったじゃない。・・そうだ。」

本を読んでいた主人が、立ち上がりながら言うので、何かしらと聞き耳をたてた。冷蔵庫がパカリと開いた音がする。なにかいいものが出て来るのかしら!!今日の晩ご飯をつくってくれるのかな。材料なにがあったっけ。。と、ワクワクしながら気配を消していました。なにやら楽しそうな音が(冷蔵庫がパタンと閉まって、ビニールがカサ、カサと何か開く音とか、戸棚がパン、と丁寧な音をたてるとか)します。

「なに、つくるの?」

こそっと聞いてみると、主人はにこ、と笑って言いました。

ジンジャーエール、作ろうとおもって」

「ええ!」

「きみ、好きでしょ」

「大好き!・・でも、いったい、作れるのかしら。。」

 

とっても嬉しいけれど、実は私は警戒していました。結婚したばかりのころ、高熱で倒れた私に主人が生姜の飲物を作ってくれて、それを飲んで寝たお陰で無事治ったのだけど(毎年かなりの熱を出す私だけど、今までで一番ひどい熱だった。)、、それはそれは、とんでもない味だったの。たぶん生姜が多すぎたんだと思う。熱に浮かされながらも、これは飲んだらいけないんじゃないかと思って、隙をみてこっそり少し流したくらい。。だから主人に生姜を渡したら、危険なものが出てくるかもしれないとちょっと心配だったの。

 

「作ってくれてとっても嬉しいのだけど、あのね、甘くしてほしい。」

「うん」

早速生姜を刻みはじめた主人の気分を害さないように、控えめに伝えました。

「それから、あんまり、刺激がつよくならないようにしてほしいの」

「ちょっと、じゃま。レモン絞り、だして。」

「辛いのじゃなくて、甘いのが好きだな」

「もういいから、向こういって。」

「はーい」

一応意向は伝えた、と納得してこっそり、部屋にもどりました。

 

「できたよー」

飛んでくると、そこには魅惑的なサーモンピンクのお薬のようなものが出来ていました。

 

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 「わあ!!!」

思わず足がとまって、じーっと見てしまいました。

「どんな味か分からないよ」

「なんだか、きれい!写真、撮ってもいい?」

主人は笑っていました。それで、お気に入りの腰掛けに乗せたら、午後の光を浴びて静かに光ったようでした。

初めの一杯は炭酸で割って、次の一杯はお湯で割ってみました。それはそれは、美味しかった。小さい鍋いっぱいあったはずなのに、2日で無くなってしまいました。

美味しいジンジャーエールを作りたい方(正確には、ジンジャーシロップね)のために、特製レシピは以下のとおりです。

 

①生姜を細かく刻んで、小さな鍋の3分の1くらいのところまで水をいれて火にかける。

②沸騰したら、黒砂糖をいれて煮詰める。(大さじ3杯くらい)

③レモンの種をとって、きゅっとしぼって、かき混ぜる。

④お気に入りの瓶にいれる。(生姜はいれない)

 

これだけ!!とっても美味しいんだから。なんていったって、自分の手でジンジャーエールができるなんて、ちょっと素敵でしょ。

完成したばかりの絵の中のコの毛並みも、こんな甘い色だったな。。そんなことを思いながら、すぐに無くならないように少しずつ少しずつ、飲みました。

雪やどり

寒くてなかなかふとんから出たくない。目覚ましを瞬時に止めてから、また小さく丸まってじっと考えていた。

これは寒い。

ヒーターをパチパチつけて、気合いをいれて立ち上がりお湯を沸かす。息が白かった。

カーテンの隙間から、真っ白な景色が見える。

(やっぱり!)

雪が斜めに降るのは、世界がゆっくり砂時計になったようで綺麗だった。しばらくうっとり眺めたけれど、沸いたお湯を止めながら眉間に力が入る。

(出掛けたくないなぁ・・・)

今日は治療の日で、奈良まで行かなくちゃならない。それからお仕事で、帰って来られるのは夜遅くだった。

(こんな雪の日に治療に出たら、体に良くないんじゃないかしら。先生、日にち替えて下さらないかしら。。)

私はまた都合のいいことを考えはじめて、グズグズしだした。白湯を飲んだら体が渇いているのを感じて沢山飲んだ。それから、寒さに避難している花たちにも水をあげた。外の雪は吹雪になっていた。

 

カイロを背中とお腹に貼って、靴にも足裏用のカイロを入れた。温かい服に着替えて、30分前に出発しようとしていたけれど、まだ家から出たくなくて何かミラクルがおきないかと期待した。(先生が、雪がすごそうだから来週にしなさいと言って下さったらいいのにな。。)そんなことを考えみたけれど、ミラクルは起きなかった。諦めて支度をしていたら主人が起きてきて、雪をみて私をみて、慰めてくれた。

「気をつけて、いっておいでよ」

「行きたくないなぁ。。」

そう言ってから、

「先生が嫌なわけでも、治療が嫌なわけでも、お仕事が嫌なわけでもないの。むしろ大好きなのだけど・・・お家から出たくないの」

私のいつもの言い訳(とっても暑い日とか、寒い日とか、風の日や雨の日やこんな雪の日に心底思う)を言うと、気の毒そうな顔をして、

「気持ちはよくわかるよ」

と同意してくれた。それでも行かなくちゃいけないのは分かっていたから、とぼとぼ出掛けようとしたら、

「これを着ていきなよ」

と主人が自分のコートを貸してくれた。嬉しいけれど、既に着たコートを脱ぐのが面倒だったので、

「ありがとう、でも大丈夫!」

と出掛けようとした。ところが珍しく、

「外は寒いし、今日は遠くまで行くんだから着た方がいいよ」

という。こういうときの主人には間違いがないから、むにゃむにゃしながら着替えた。着てみると、主人のコートは布団のようで、実に温かかった。

「ありがとう、とっても温かいな」

「それは良かった。気をつけていきなさい」

玄関を開けると冷気が顔中にはりついた。向かいの家が雪ではっきり見えない。これは凄いな、と階段をよたよた降りた。足元で雪がぎゅ、ぎゅとくすぐったかった。止まった車に雪が積もって、タイヤしか見えない。大きな雪像のようになっていた。私もちょっと立っていたら雪だるまになりそうだった。バス停まで急ぐ。

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バスは遅れていたけどちゃんと来た。携帯をみたら母とお母様から、雪は大丈夫?とメールが入っていた。温かい気持ちになって、二人と主人に無事遭難せずバスに乗れましたと送ってから、周りをみて気付いた。

誰も私ほど重装備をしていない。

トレーナー姿の人もいる。ただの背広姿の人も沢山いる。これはどうしたことかしら。。

「寒いなあ」

「久しぶりにちょっと降ったなぁ」

おばあ様達が話している。

(いま、「ちょっと」って言った!!)

目が丸くなる。窓の外では確かに吹雪。雪もくるぶしまで積もっているのに。ところがそう話すおばあ様たちも、普通の冬の格好で、モコモコしているのは私だけだった。

「奈良まで、気をつけてね。鹿も、雪やどりしているかもしれないね。」

電車に乗り替え、主人から風流な優しいメールが届く。ところが。

地下鉄を抜けて京都の南へ、地上に出たら雪なんてどこにもない。眩しく晴れて、電車の中にいても分かる、麗らかなくらいの冬晴れだった。

(雪なので今日は休みます、って言わなくて良かった。。)

奈良までまだまだ先は長かった。マフラーをとって、コートの前を少し開けた。それでも羽毛布団みたいな大きなコートは温かくて、守られているようでほかほか幸せな気分でした。

 

お題「雪」

やさしいライオンの子守唄

小さいときに読んでいた絵本の話を主人のお母様としていたら、

「うちにも一冊だけ、残ってるで。」

と言う。あとのは引越しで行方不明になってしまったけれど、一冊だけ残ってるそう。

「見たい!」

と言うと、奥の部屋から持ってきてくれた。主人の弟さんが大好きだったらしい絵本は、少し色あせて角が丸くなっていた。開くと、カサ、と柔らかい音をたてました。

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「やさしいライオン」

やなせたかし 作

ポニー・ジャックス 企画

フレーベル館(1970)

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ひとりぼっちになってしまったライオンのブルブルを、子供を亡くした犬のムクムクが育てるお話です。

「読んであげようか!」

とお母様が言うので、嬉しくて、うん!と言ったのに、お母様は「冗談よ」と照れて笑っていた。代わりに、ムクムクの子守唄を歌ってくれた。

「ブルブルーいいこねーねむりなさいーねむりなさいー」

こんな歌やったやろ、ほら、やっぱりそうや、この絵が可愛いんや、といいながら、少し皺がついたページを指でのばしていていました。

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私も、奈良美智の犬の絵に似ている、シンプルで可愛い絵にぎゅっと惹かれた。この、ムクムクがブルブルをおんぶしている絵を見て!!ブルブルのしっぽがくるくる巻き付いているのよ。二匹が背中に夕陽を浴びるこの場面を見ながら、きっとこうして色んな子供がそれぞれのお母さんに歌を歌ってもらったんだろうなあと思うと、自分もこの野原にいる気持ちになりました。

ムクムク母さんに育てられたブルブルは大きくなって、サーカスにいきます。それでも、小さいときに歌ってもらった子守唄は耳の底に流れ続けて、ある夜、脱走してしまいます。それで、とっても悲しいことになってしまうのだけど・・・。

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それでも、最後はちょっとじんわりするの。シンプルなヴァイオリンの旋律がお話をぎゅうっと引っ張るような、そんな優しいお話でした。

 

このお話を調べてみたら、1982年にもう一度絵が変わって、同じフレーベル館から出版しているようです。最初にラジオドラマとして発表されて、それを絵本にしたそう。近くの本屋さんには無くて中は見れなかったのだけど、表紙の絵の赤い夕陽が染みる様で、私はこの古いバージョンの方が好きだなと思いました。

「『やさしいライオン』がなければアンパンマンも絵本化されなかったと思う。『やなせさんの作品のなかでは、やさしいライオンがいちばんいいですね』といわれることが多い。今見ると絵が下手くそではずかしいが、技術的に未熟な欠点を超えて多くの人に愛されてきたことは作者としてはうれしい限りである。」と、作者のやなせさんのメッセージが載っていました。(やなせスタジオより引用)たくさんの絵本のリストの中で、一番最初に載っていたから、やなせさんの中でも大切な絵本なんだろうなあ。

むかし、お母様が歌った思い出と一緒に、絵本はまた大切にとじられて大事にしまわれていきました。

治療の日

これは昨日のこと。駅へ向かう道で、あら?と思ってはいたけれど、駐輪場にいれたときには、とうとうタイヤはべこべこになっていた。

(あーあ。。また空気抜けちゃった。。空気入れご自由にどうぞ、ってあったから、帰りに入れさせてもらおう)

そう思って、お仕事を終えた帰り道、自転車をキュウキュウ引きずって空気入れのところに行ってみた。

(・・・)

ところが、使いかたが分からない。

(なんで、洗濯バサミみたいなものがあるのかしら。これはどこに止めるんだろう・・)

前に主人が入れてくれたみたいに、ポンプをするところは分かるのに、その前のセッティングが分からなかった。ちょっと恥ずかしく思いながら、受付のおじいさんとおばあさんのところに行って、使いかたを教えて頂けませんか、と控えめに尋ねた。親切なおじいさんにたいへん驚かれたけれど、あっという間に機械を操作してリズミカルに入れてくれた。ついでに、前の車輪もパンパンにしてくれた。 厚くお礼を言って、ビュウビュウ風を切って走った。

なのに、家に着くちょっと手前で、おしりのあたりがまたボコボコし始めた。やっぱり、空気が抜けている。

(あーあ。。やっぱりパンクかしら)

しょんぼりしながら、ゆっくり自転車を押して帰った。

 

そして今日、私は宅配便が続いて早起きしてしまったこともあり、ごねていた。歯医者さんにいかなくてはいけない。なのに、自転車はパンクしている。自転車は二台(主人のと、私の)あるのだけど、主人が滅多に乗らないことを理由に私が両方使っている。主人のがパンクしてから、こっそり自転車置き場の奥の方に隠して、無かったことにしていた。ところが私のまでパンクしてしまったからには、何とかしなくてはいけない。だって歯医者さんは自転車で行けばすぐだけど、電車に乗るほどでもなくバスは無く、歩くと遠すぎるんだもの。

「しかし君はそんなに自転車に乗る訳でもないのに、京都に来てから3年ちょっとで何度パンクしたんだろう」

「パンクって、そんなにするものじゃないの?」

「君の乗る頻度ならそんなにしないだろうね。」

でも壊れちゃったんだもの・・ともごもご言うと、

「自転車やさん、調べてみたらいいじゃない。」

主人がコーヒーを飲みながら言った。今までは親切な主人の友人が怪我をした自転車を車に乗せてぴゅーっと直してきてくれたけれど、あんまり頼るわけにいかない。今度こそは自分でいかなくちゃな。。と分かっていた。

「もう、調べてあるの。駅へ向かう道を山の方にいったところにあるみたい。」

「電話してみたら?」

「・・・」

いま、するの、とぼそぼそ言いながら、部屋に戻った。顔中がかゆくなってきた。めんどうくさい。。。

 

自転車屋さんは、たいへん気持ち良く元気なかんじでハキハキと説明してくれた。私も合わせてハキハキ答えたけれど、電話を切った途端、くったり疲れてキルトを頭からかぶってしまった。

「自転車やさんに行くだけで大変なのに、歯医者さんにも行かなくちゃいけない。自転車やさんで歯の治療してくれたらいいのに。。それか、歯医者さんで自転車を直してくれたらいいのに。」

主人は(自分はどこも痛くないものだから)笑って、

「はやく支度しなよ。いつもみたいに走り回るはめになるよ」

と言った。

 

自転車修理屋さんは、思っていた以上に近かった。自転車を押していつもの道を歩く。特に坂道は、歩いても自転車に乗っても私の足ではたいして変わらない。でも平地を自転車で押しながら人とすれ違うと、(なんでこのひとは自転車に乗らずに押しているんだろう、と思われるかしら)と思って、ちょっと早足で進んだ。

湯気のにおいがする自転車やさんで、「15分で治ります」と言われた。こういうとき待っているべきか迷ったけれど、「良かったら一回りしてきて下さい」と言われた。(どこを一回りするんだろう。。)と思ったけれど、「ちょっと郵便局に行ってきます」と言った。用は無かったのだけど。道々、黄色く枯れた葉とロウバイの花が綺麗だった。

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自転車はあっという間に治って帰ってきた。お金を払って、お礼を言って元気になった自転車に乗って歯医者さんに向かった。治療は今日はちょっと痛かった。けれど、今日は治療の日だわ、これが別の日に重なったら耐えられないもの。。と思って頑張った。

それで治療を終えたもの同士、力を合わせて家に帰った。

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だめ人間

年が明けてちょっと経ったけれど、私はまだぐにゃぐにゃしていたい。年末にいつも通りの高熱を出した後は、年賀状、おせち、ごあいさつ、とキビキビしていたはずなのに、何だかちょっと作業をしたら、ころん、と転びたくなってしまう。

「だめだ。だめ人間になっちゃう。」

私がお茶を淹れてはボゥっとし、洗いものをしては途中で窓の外をみて手がとまったり、はてまた何をしようとしていたか忘れて、力つきて廊下で横になっていたりするのを見て、主人が笑いながら言った。

「いいじゃない。ゆっくりしなよ。」

「でも、ちょっと、かなり役ただずなの。」

「だって、先週はまだ去年だったんだよ。きみは12月に予定をいつも通りぎゅうぎゅうに詰め込んだでしょ。今ごろ疲れが出たんだよ。」

そんないい話にのっていいのだろうか。と思いながらも、そうだ先週はまだ大晦日だったな、とちょっと納得した。気がついたら2016年が始まっていた。気分はリセットしたつもりだけど、体はそういえば、きのうの、それからその前の続きがゆっくりと繋がっているのね。

「今日、魚屋さんに行こうと思ってたけど、やっぱり無理かもしれない。」

「今度にしなよ。一日二日、どうとでもなるよ」

それでゆっくり支度をして(本を出したりしまったり、お財布を3べんくらい確認したり、持って行く飴をどれにしようか迷ったり、いつもの倍くらいかかってしまった)、日溜まりのなかをのんびり出発した。

 

そんな調子だから、知り合いの小さい子と話していて、去年出したクイズの答えを聞かれたのだけど、すっかり忘れてしまって答えられなかった。

「ごめんね、お休みのあいだに脳みそが溶けちゃって、忘れちゃった。つぎまでに考えてくるから待っててくれる?」

と申し訳なく思いながらも正直に伝えたら、

「そりゃ大変だ」

と彼は目を丸くして言った。その顔が面白くて

「どうして?」

と聞いたら、

「脳みそが溶けるなんて、大変やんか。どしたら治るん」

と言う。その言いかたがあまりに可愛くて、また心配かけて悪いことをした、と思ったので

「大丈夫、もうちょっとぐにゃぐにゃしてたら治るから。だってほら、寒いでしょ。そのうち固まるわよ」

と、ぎゅうしながら伝えると、

「せやな。それならええけど。。」

と笑っていた。

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帰り道、外は思ったよりずっと暖かかった。濃い灰色の闇に白い花がぼわ、と光る。開きすぎた椿の熟れたような甘い香りがあたりに広がった。(こんなに暖かいなら、私の溶けたあたまもしばらく固まらなくても仕方ないわ・・)そんなことを思いながら、駅へと向かった。こうしてゆっくり一年がはじまるのも、なかなかいいものかもしれない。

ばくだん!

いつもの棚に、見慣れない野菜がある。

(なんだろう!)

お店は少し混んでいた。今日はちょっと荷物が多くて、じゃまにならないよう、他の野菜を見るふりをしながらゆっくりその野菜に近づく。

(爆弾だ!)

私は結婚するまで一人で野菜を買うことが無かった。関東にいたときは夜遅くまでやっているお店が駅の近くにあったから、帰り道に野菜を選んでいた。いつも同じお店で買っていたから、だいたいピーマンはこれくらい、とか人参はこんなもの、という基準がそこでできた。京都に来てから、こうしてみたことのない野菜にたくさん出会う。わくわく連れて帰ることにした。レジで、最近仲良しのお姉さんがカゴに移しながら、

「真っ黒ですねえ!」

というので、

「ね、爆弾みたい!」

といったら

「確かに!」

と笑い出した。それで何だか気分がほかほかして、ニコニコ袋につめた。人を一日5回笑わせるのが一番の健康法、と前にある本で読んでから、できるだけ実践するようにしている。誰にも会わないときには、主人を5回笑わせるか、楽しいことをたくさん考えるようにしているの。

家にかえって中身をあける。

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(カブみたいだけど、大根って書いてあったしなあ・・)

割ってしまうのが勿体なかったけれど、興味しんしんに半分に割ったら中身は白かった。ツーンとつめたい匂いが鼻につく。これは辛そうだ、と思いながら薄ーく切って一口かじったら、辛い辛い大根おろしの味がした。必死でお水を飲んでから、作戦を練る。

(これは普通には食べられなさそうだから、じゃことおだしでホカホカに炊いてみよう)

いつもは皮をむくけれど、黒い皮が綺麗だからよく洗って、5ミリくらいの厚さに切って並べて、皮ごと煮込んだ。白いお腹と黒い皮とが交互に見えて、まるでシマウマのようだった。湯気がもうもうとたって、茹でても茹でても味がとがって、美味しくなるのにとても時間がかかった。

最近きいた話で、日本人が一番よく食べる野菜は大根らしい。キャベツかトマトかなあと思ったから、驚いた。その中には甘い赤いラディッシュや、白く太った丸いのや、この黒い爆弾も含まれるのかしら。

あとで調べたら、オレンジ色じゃなくて鮮やかに赤い人参や、こんなに黒い野菜もあるなんて京野菜ってすごいなあ、と思っていたのに、これはイタリアの野菜らしい。それだったら煮物じゃなくて、サラダのほうがよかったかな、お肉とつけあわせのほうがよかったかなあ。まあ、美味しかったから、いいか!