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ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

エドワード・ホッパーな夜

art

駅を降りて階段を上がったら、まるまる太った柴犬と、小柄なおじいさんが傘を二本持って、誰かを待っていました。

私は例によってぼうっと歩いていたので、突然目の端にふわふわの何かが揺れたからびっくりした。柴犬は、ふせの状態でしっぽを元気にふりながら、おじいさんの顔をみたり、その視線の先の階段の方へ湿って黒々している鼻を向けたりしている。犬と一緒に住んでいた人ならきっと知っている、あの鼻の冷たさや犬のにおい。折り畳み傘をできるかぎりゆっくりさしながら、しばらく彼を見つめてしまいました。



金木犀の香りがあたりいっぱいに広がっている。私の赤い傘も夜に溶けて、落ち葉も家々も星もブルーグレーの絵の具をかぶせたようになっている。耳の奥でごうごう風がなっていて、自分の足をしっかり持ち上げて歩かないとゆっくり地面に呑み込まれていってしまう気がする。

こんな雨の日は、陽が落ちたら急に夜が濃くなってしまう。闇に目をこらして歩いていたら、ふ、ふ、とエドワード・ホッパーの絵が頭に浮かんできました。

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Edward Hopper  ' Night in the Park '  1921 Etching

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Edward Hopper  ' Night  shadows '  1921 Etching

 

ホッパーの絵を思い出したのは、たぶんアメリカ的なものに立て続けに触れたからで、ハロウィンのカードを何枚かもらったことや、カニグズバーグの「魔女ジェニファとわたし」を読み返したことも関係あるかもしれない。主人がゆうべJIM BEAMを飲みながらその話をしていた事も。アメリカが近くにあるとき、雰囲気だけちょっと味わいたくなったときなんかに、ホッパーの絵は絶大な効果を発揮する。

そんなホッパーのエッチングをまじまじと見ました。 'Nighthawks' (夜更かしの人々)が有名だけど、エッチングも醒めてていいな、と思った。どのシーンも、何だかどこかで見た事がある気がするの。

 

夕方、いつもは仕事をしている時間帯にひとりで歩いて帰るのは久しぶりで、いつの間にか随分早く夜が来て、とても寒かった。それと、今日はくたびれて少し淋しかったのかもしれない。まるで、ホッパーの絵の中に吸い込まれてしまったような懐かしい夜でした。