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ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

ひとりの時間

本と音楽

子どもの頃からずっと長い時間を電車やバスに乗って、旅をするように生活していた。鞄の中にはいつも文庫本が数冊と、スケッチをしたり、思い付いたことを書きとめるノートとペンが入っていた。ところが、結婚したらほとんど毎日主人と一緒にいて一緒に移動することになった。それはそれで楽しくて嬉しいのだけど、ひとつだけ残念なことがある。それは本を読むペースがうんと落ちてしまったこと。

主人はだいたい、私が眠ったら本を朝まで読んでいる。分厚くて難しい本を一度に数冊、気分によって読み替えているみたい。私がいると本に集中出来ないらしい。私は一緒にいるときはつい、お喋りをしたり遊んだりしたくなっちゃう。お絵描きをしたりはするのだけど、主人が隣にいるのに本を開いて中に入ることはあんまりない。

 

今日は久しぶりに電車でひとりで移動した。年末以来なので、夕方の大学生の帰り道にはさまれてちょっときゅうくつだった。年明けから読み始めた文庫本を取り出して読む。アメリカの詩人、マーク・ストランドの「犬の人生」だ。これは小さな短編集なのだけど、ひとつひとつが鮮やかな色彩でパッケージされていて、目の奥に夕暮れの波紋が広がるように感じるの。帰り道、私の駅に着いたときにぴったり、スープの最後の一滴を飲みほすみたいに読み終えた。余韻を味わいながら、帰り道を歩く。川の音を聞いて、真っ暗な木の影を見ながら、本のことを考える。一番良かったのは、やっぱり最後の解説に出ていた詩だったな、言葉のはしっこを捕まえようとする。

 

' Keeping things while '  by  Mark Strand

In a field, I am the absence  of field.        

This  is  always  the  case,   

Whatever  I am, I am what is missing. 

When I walk, I part of the air

and always  the air moves in to fill the spaces

where my body's been.

We all have reasons  for moving.

I move to keep things whole. 

 

「物事を崩さぬために」 (訳 村上春樹

野原の中で 僕のぶんだけ 野原が欠けている。

いつだって そうなんだ。

どこにいても 僕はその欠けた部分。

歩いていると 僕は空気を分かつのだけど

いつも決まって 空気がさっと動いて

僕がそれまでいた空間を塞いでいく。

僕らはみんな動くための 理由をもっているけど

僕が動くのは 物事を崩さぬため。

 

あんまり主人が言いそうなことなので、笑ってしまった。帰ったら、主人にこの詩のはなしをしてあげよう。なんて言うかな。そうだよ、って笑うかな。少し早足で、お家に急ぎました。

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