ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

おじいさんと月

淡い青のグラデーションの空にオレンジ色の雲が光っていて、それをうっとり見ていたら歯医者さんに遅刻しそうになった。柔らかな風が吹く夕方だった。

私の自転車技術はちっとも上達しなくて、よろよろよろよろ進む。なぜか車が走る方に倒れてしまうので、できるだけ誰も通らない道を行く。

ところが、よく迷子になる。近くの住宅街には「行き止まり」が多くあって、大きな学校の校庭のまわりを大きく一周しなくてはいけなかったり、だいたい3回に一回は変な道に入ってしまう。今日は迷わなかったけれど夕暮れどきは特にあぶないの。

 

待合室で診察券を出して待っていると、治療を終えたおじいさんが隣に座った。会釈をすると、

「日が落ちるのが、はよなったなあ」

と、ひとり言のようにつぶやいて窓を見た。

「そうですね、綺麗な夕暮れですね」

思わず答えると、

「ほんまやね。でも、あんまり早く夜が来るのも淋しい気がするな」

という。なんだか私まで淋しくなってきて、どう答えたらいいか迷ってしまった。私が何となくニコニコしていると、

「ゆうべの月、見たか?」

おじいさんの目は、くりくりと大きかった。

「はい。すっごく綺麗でした。でも今晩はもっと大きいそうですよ」

「ほんま。昨日は月があまり眩しくて夜中起きてしもうた。満月と思とったら違うんかいな」

「よく分からないけど、昨日は中秋の名月で、今日はスーパームーンって言って、うんと地球に近づくみたいです」

「そうかぁ。楽しみやなあ。」

「はい」

おじいさんのニコニコがうつって、私も嬉しくなった。

 

帰り道、日はとっぷり暮れていた。右に左にペダルをこぎながら、大きな月が雲に隠れたり、出てきたりするのを眺めた。ところどころで人が立ち止まって空を見上げていたり、写真を撮っているのを見かけて、私も自転車を降り一枚写真を撮ったけど、あんまり眩しくて何だかうまく写せなかった。

おじいさんも、今ごろ月を見てるかな。。

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