ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

雪やどり

寒くてなかなかふとんから出たくない。目覚ましを瞬時に止めてから、また小さく丸まってじっと考えていた。

これは寒い。

ヒーターをパチパチつけて、気合いをいれて立ち上がりお湯を沸かす。息が白かった。

カーテンの隙間から、真っ白な景色が見える。

(やっぱり!)

雪が斜めに降るのは、世界がゆっくり砂時計になったようで綺麗だった。しばらくうっとり眺めたけれど、沸いたお湯を止めながら眉間に力が入る。

(出掛けたくないなぁ・・・)

今日は治療の日で、奈良まで行かなくちゃならない。それからお仕事で、帰って来られるのは夜遅くだった。

(こんな雪の日に治療に出たら、体に良くないんじゃないかしら。先生、日にち替えて下さらないかしら。。)

私はまた都合のいいことを考えはじめて、グズグズしだした。白湯を飲んだら体が渇いているのを感じて沢山飲んだ。それから、寒さに避難している花たちにも水をあげた。外の雪は吹雪になっていた。

 

カイロを背中とお腹に貼って、靴にも足裏用のカイロを入れた。温かい服に着替えて、30分前に出発しようとしていたけれど、まだ家から出たくなくて何かミラクルがおきないかと期待した。(先生が、雪がすごそうだから来週にしなさいと言って下さったらいいのにな。。)そんなことを考えみたけれど、ミラクルは起きなかった。諦めて支度をしていたら主人が起きてきて、雪をみて私をみて、慰めてくれた。

「気をつけて、いっておいでよ」

「行きたくないなぁ。。」

そう言ってから、

「先生が嫌なわけでも、治療が嫌なわけでも、お仕事が嫌なわけでもないの。むしろ大好きなのだけど・・・お家から出たくないの」

私のいつもの言い訳(とっても暑い日とか、寒い日とか、風の日や雨の日やこんな雪の日に心底思う)を言うと、気の毒そうな顔をして、

「気持ちはよくわかるよ」

と同意してくれた。それでも行かなくちゃいけないのは分かっていたから、とぼとぼ出掛けようとしたら、

「これを着ていきなよ」

と主人が自分のコートを貸してくれた。嬉しいけれど、既に着たコートを脱ぐのが面倒だったので、

「ありがとう、でも大丈夫!」

と出掛けようとした。ところが珍しく、

「外は寒いし、今日は遠くまで行くんだから着た方がいいよ」

という。こういうときの主人には間違いがないから、むにゃむにゃしながら着替えた。着てみると、主人のコートは布団のようで、実に温かかった。

「ありがとう、とっても温かいな」

「それは良かった。気をつけていきなさい」

玄関を開けると冷気が顔中にはりついた。向かいの家が雪ではっきり見えない。これは凄いな、と階段をよたよた降りた。足元で雪がぎゅ、ぎゅとくすぐったかった。止まった車に雪が積もって、タイヤしか見えない。大きな雪像のようになっていた。私もちょっと立っていたら雪だるまになりそうだった。バス停まで急ぐ。

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バスは遅れていたけどちゃんと来た。携帯をみたら母とお母様から、雪は大丈夫?とメールが入っていた。温かい気持ちになって、二人と主人に無事遭難せずバスに乗れましたと送ってから、周りをみて気付いた。

誰も私ほど重装備をしていない。

トレーナー姿の人もいる。ただの背広姿の人も沢山いる。これはどうしたことかしら。。

「寒いなあ」

「久しぶりにちょっと降ったなぁ」

おばあ様達が話している。

(いま、「ちょっと」って言った!!)

目が丸くなる。窓の外では確かに吹雪。雪もくるぶしまで積もっているのに。ところがそう話すおばあ様たちも、普通の冬の格好で、モコモコしているのは私だけだった。

「奈良まで、気をつけてね。鹿も、雪やどりしているかもしれないね。」

電車に乗り替え、主人から風流な優しいメールが届く。ところが。

地下鉄を抜けて京都の南へ、地上に出たら雪なんてどこにもない。眩しく晴れて、電車の中にいても分かる、麗らかなくらいの冬晴れだった。

(雪なので今日は休みます、って言わなくて良かった。。)

奈良までまだまだ先は長かった。マフラーをとって、コートの前を少し開けた。それでも羽毛布団みたいな大きなコートは温かくて、守られているようでほかほか幸せな気分でした。

 

お題「雪」