ruru on the roof

大好きな絵と絵本と、日々のこと・・

雨の香り

お仕事とご用事で、数日東京にいました。台風と一緒の移動になるかしらとドキドキしていたけれど、電車が止まるとか、上から下までびちょびちょになるとか、悲しい目には合わずに済みました。でも、ほとんどずっと雨降りでした。

f:id:rumir:20160922092705j:plain

京都の雨は少し土の香りがするけれど、東京の雨は何だか冴え冴えとするようで、あたりの景色の輪郭がくっきりする気がするの。みんな傘を目深に刺して早足で歩く。でも、あまのじゃくな私はついゆっくりになってしまう。(だから肩や足元が濡れるのだけど。。)絵や道具が濡れないように気をつけながら移動するのは少し大変でした。

赤坂見附での打ち合わせが終わって外に出たら、雨粒が大きくなっていて、(あらら・・)と思いながら駅に足早に向かいました。そのとき、おばあさんが工事現場の方に道を聞いているけれど、なんだか困っている様子だったので気になって、

「大丈夫ですか?」

と声をかけました。近くに来るまで気がつかなかったけれど、おばあさんは海外の方のようでした。あなた、英語はしゃべれる?というので、ちょっとなら、と答えると、だいぶ濡れてしまった地図を示して、ここに帰りたいの、とおっしゃりました。

「ここの場所、わかりますか?」

と工事現場のおじさんに聞くと、ちらりと一瞥して、

「英語、分からないんでね」

と、向こうのビルを見ながら答えました。こまった。。私は、英語はちょっとわかっても、地図が全然わかりませんでした。(実は、このすぐ近くの学校に20年近く通っていたのですが、あまりに方向音痴で全くわからなかったのです)せめて地図の向きを理解しようと思って、

「すみません、どちらが北かわかりますか?」

と聞くと、

「分からないね」

と言います。工事現場の方は正直に言って、とっても親切ではありませんでした。傘もささないでお仕事中、不機嫌でギリギリなのにこれ以上構わないで、といった感じでした。でも雨は激しくなってきた上に人通りが減って、この方を逃したら道を知る人を探すのは大変そうでした。傍でおばあさんが不安そうな顔なので、きっと大丈夫だからちょっと待っててねと伝えて、さらにおじさんに質問しました。

「この通りは何通りですか?」

青山通りだよ。知らないで歩いてるの?」

おじさんは驚いた顔でこちらを見ました。

「そうなの。それで、こっちの通りは?」

「〇〇通り(忘れてしまいました)」

「ありがとう!」

じゃあこっちだ、ともうびしょ濡れになってしまった地図を片手におばあさんと向かいます。おばあさんはとても不安そうでした。たぶん大丈夫よ、と伝えるとおばあさんは突然、ありがとうと言って、「私、一人ぼっちでとっても辛かったの」と泣き出しました。

私は咄嗟に、さっきの工事現場のおじさんや、他の日本の人が冷たかったのかなと思ってとても申し訳なく思いました。ところがおばあさんの話を聞くと、なんと彼女はカナダから息子と息子の奥さまと旅行に来たのだけどパスポートを落としてしまって、航空券もお財布も無くしてしまって、再発行に5日間かかるあいだ、一人ぼっちでとても寂しい思いをしたそうなのです。

「なんてかわいそうに!!大変でしたね。」

思わずぎゅっとすると、おばあさんはえんえん泣くのでとても心配になりました。ホテルはすぐにわかりました。次のお仕事の時間が迫っていたからどうしよう、と思ったけれど日本にあまりに悲しい思い出ばかりが残ったら辛すぎると思って、「お茶でもいかが?」とお聞きしたけれど「どうもありがとう、でも大丈夫。」と笑顔を見せてくれました。それで、お名前を交換してハグをして別れました。

本当は「元気出してね」と言いたかったけれど、英語で何て言ったらいいのかわからなくて、「あなたが笑顔だと嬉しいな」ととても下手くそな英語で伝えました。帰って、英語がペラペラの母に尋ねたら幾つかフレーズを教えてくれたけれど、「きっと伝わったわよ」と言ってくれたので、ちょっとホッとしました。

 

f:id:rumir:20160922155726j:plain

二日後、京都に着いたらまだ降っていました。そのままお仕事を終えて夜、雨は激しくなっていました。連日ぎゅうぎゅうの予定で大荷物だったのでこまったな。。と思っていたら友人が車で拾って帰ってくれることになりました。待っているあいだ、京都の雨の香りを胸いっぱい吸い込みました。すぐに来てくれた友人に心からお礼を言い、車に乗り込みました。おばあさんカナダに帰れたかな。あのあとちゃんと楽しいことがあって、無事に帰れているといいな。。

f:id:rumir:20160922205350j:plain