ruru on the roof

最愛の主人が突然、亡くなりました。6月の美しい夕方のことでした。私がご用事で3時間出掛けて帰ってきたら倒れていて、救急車を呼んで救急隊の皆さまや病院の先生方が一生懸命して下さったけど、もう目を開けてはくれませんでした。

3、4年前から体調を崩していたけれど、ずっと変わらずうんと優しくしてくれ毎日を過ごしてきました。主人は色々自分で工夫して、治そうと一生懸命過ごしてきました。昨年からは病院が大きらいなのに頑張って毎回ふたりで通いました。(レントゲンにも、どのお部屋にもお医者さまに笑われながらついていきました)それで特にこの春は久しぶりに元気で、快方に向かっているんだと思っていました。前日まで一緒にお仕事にでかけたくらい。一昨日は将棋もエアトランプもしました。主人が元気なのがとてもとても嬉しくて、ささやかなこのブログをまた書きはじめたりしました。

 

ちょっとだけ、主人のはなし。
主人は私の習い事の先生で、10歳のとき主人をテレビで見て「この人みたいになりたい」と父に教室を探してもらい出逢いました。インターネットのないときです。14歳から稽古を見て頂くようになり、全然相手にされませんでしたが、私はずっとずっと大好きでした。ほとんど毎日を稽古場で過ごして、でも結婚してからは13年間毎日一緒で、思い返しても夢みたいに本当に幸せな毎日でした。一回り年上の主人は、シャイで誠実で、絶対うそをついたりごまかしたりしない、仙人のような人でした。自分の生き方を通した人で、今もいちばん大好きで尊敬しています。


主人の葬儀が終わってお部屋で泣いていたら、窓の外で花火があがりはじめました。そうしたら激しい雨が降りだして、見たことのない雨の中の花火はとても綺麗でした。

その晩遅く多忙な弟が急に仕事で京都泊になって寄ってくれたり、数ヵ月に一日しかない幼なじみのお休みが偶然葬儀の次の日で、東京からうちにきて朝から晩まで手伝ってくれました。主人の最愛の弟さんが支えてくれ、ほかにも偶然がたくさんでした。きっと心配症の主人が色々準備してくれたんだろうな。。

帰り際、幼なじみが

「この扉、なぁに?」

と聞きました。

「あのね、この部屋からだけ、屋上にのぼれる階段があるらしいの」

と説明したら目を輝かせたので、扉を開けて二人で屋根に登りました。主人がとっても危ないし、そんなことしちゃだめと言うので無いことにしていて、私自身忘れてたの。

でも登りました。

初めて京都にきて屋根に登り、きゃあきゃあ喜ぶ幼なじみの隣で遠くの連なる山々や家の屋根を眺めていたら、何が本当にあったことでどれが夢か、時間も空間も全てが何が何だかよくわからなくなりました。

屋根が淡いピンクオレンジに染まります。ちぎった雲がゆっくり風にとけて形を変えながら移動していました。私は手すりに腰かけて、ぼんやりしました。高いところが苦手な主人も、いま一緒に登ってるのかな。なんて言うかな、、と思っていたら、

「ね、これ、ルルオンザルーフになってるよ」

幼なじみがいつもの笑顔で言いました。私は息をのみました。ブログを書いてみようかなと作ったとき、タイトルをどうしようかなと主人に聞いたら、ちょっと考えてから笑ってそう答えたからでした。

「・・・ほんとうに!」

それから小さいころ、小学校のプールの屋根に登って校内放送で叱られたり、当時住んでいた家でも私がすぐ屋根に登ろう登ろうとしていた話を彼女がしてくれて、懐かしくて可笑しくて、、久しぶりにうんと笑いました。きっといつものように、主人がしてくれたことだなと思ったらますます空が美しく複雑な色に広がって、私たちは長いこと屋根の上にいました。

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いったん、ルルオンザルーフのブログはこれでおしまい。。

でもまたどこかで、皆さまとお目にかかれたらいいなと願っています。

まさかこうなると思わなかったけど、私にとって本当に大切な毎日だったんだなと、読み返すだけで幸せな気持ちになります。主人の弟さんがきっかけをくれて、たまたまブログというものに出会い、初めてだったし誰あてにというわけでもなく、ささやかな日記のつもりで書き始めました。でも思いがけずたくさんの方に読んで頂き、コメントやメールや、お星さまをたくさん頂いたりして、ブログの世界ってこんなかんじなんだ!と楽しくすごさせて頂きました。

面倒くさがりで、書きはじめたら楽しいけど、そもそもブログを書いてること自体を忘れちゃうような私がそれでもコトコト続けられたのは、「続きはまだですか」というメールを頂いたり、「きみ、読んでくださる方がいるのに、そろそろ書かないといけないんじゃないの」と主人が心配するからでした。でもいま、書いて本当に良かったなと思っています。主人との暮らしはガラパゴス諸島みたいに独特な空間だったから、書いてなかったら自分でも夢だったんじゃないかと思ってしまったかもしれません。。本当に大切な毎日でした。


いまは主人の弟さんがずっと気にかけてくれ、家族や友人たちに支えられゆっくり偲んでいます。主人と作ったたくさんのお話や絵本の種やかけらを、少しずつ形にしていくのが私の次の夢と目標です。

そのときはまたお知らせしますね!

 

主人と私のささやかな日常を読んでくださって、ありがとうございました。皆さまもどうぞお体ご自愛ください。

今日も皆さまにいい日でありますように☆

魅惑の骨せんべい

「あれ、美味しそうだね」

お仕事の帰り道、主人がお店の前に並べられた何かに目を止めました。これは極めて珍しいこと。私はもちろん嬉しくて、ものを見るより先に

「なあに?買いましょう、買いましょう」

と言いました。

 

普段、あまりものを欲しいと言わない主人が言うので何かなと思って見たら、鶏皮のおせんべいでした。そして、「きみはきっとこっちの方が好きたよ」と、私には魚の骨のおせんべいを持ってきてくれました。

「疲れたーおなかすいたよー」

お家に帰って、ひととおり身支度をしたら、くたくたになってしまってごねていると、主人がカサカサ楽しい音を立てました。

「これ、ちょっと食べようよ」

「そうしよう」

魚の骨のおせんべいは、ぽりぽり、びっくりするほど固くて、お魚の味がしっかりついていました。

「美味しいねぇ」

お皿に並べてみると、何種類かのお魚が入ってるようです。

「ね、なんだかきれいだよ」

手にとって明かりにかざしてみると、琥珀色の小さなかけらに、骨がちゃんと見える!

「すごいね。これたくさん食べたら、骨が強くなるかな」

「爪も歯もなるんじゃない」

私に先におやつをくれてから、主人は昼間に作っておいてくれたシチューを温めてくれます。

「あのさ、骨が強いのはだいじよね」

「そりゃそうだよ」

ぽりぽりかじりながら、私はさっそく自分の骨が強くなっていくのを空想して嬉しくなりました。もし転んだりどこかにぶつけてヒビが入ってしまっても、ちゃんと治って元気にまた歩ける様にしないと。私はちょっと意地になっておせんべいを食べました。

でも、ちょっとだけ、鶏皮のおせんべいはどんなかしら、と頭を横切りましたが、数少ない主人のお楽しみだからあれはがまん、と美味しくお魚の骨を頂きました。

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虫!!

最近、きれいなトンボが飛んでいる。銅色の羽に、薄い水色や碧色の体。すー、っと空中に短い直線を引きながら進んでるみたい。

お花に水をあげると、ひらひらの花びらの陰から、ちょうちょが出てくる。柔らかな黄色の花から同じ色のちょうちょだったりすると、まるで花が飛んでいくようで思わず目で追いかけます。

このあいだ読んだエッセイに、クモは自分の体から出した糸をうんと伸ばして、それで風に乗って浮力で遠くに飛んでいくって書いてあった。風の強さによっては大気圏まで(!!)飛ぶんですって。いつも、クモはどうやって遠いところに糸をかけるんだろうと主人と話してたんだけど、予想外の方法でビックリした。

 

でも、虫は、こわい。

もともと大変苦手だけど、京都に来て、特に今の家に住むようになってから、苦手と言ってるだけでは済なくなりました。

人間より、虫や鳥や動物たちが圧倒的に多い。私たちはその中のほんの小さなひとつずつ、と実感するのです。

見たことのない虫、特に足がいっぱいあるやつや、びっくりするほど大きいもの、長いものは本当に恐ろしい。。特に毒がある恐ーいムカデがおうちに入らないよう、ここ数年は春先に庭中に薬を撒きます。なぜか、私がいるとあまり出てこないけれど、主人一人のときに限ってよく大物が出ます。(私がバタバタ人間らしくしてるからかしら、、)

 

自然が多いところや静かなところが大好き。でも、自然が多いということは、虫もものすごくいっぱいいる、ということは本当に頭にありませんでした。一時期はムカデが出る恐怖に、これはちょっと無理かもしれない、、と本気で落ち込むくらいでした。

でも恐いけれど、前から彼らがいるのが当たり前なわけで、勝手をいって申し訳ないけれど、おうちの中には入らないでね、とお庭で虫をみつけたら一生懸命伝えています。

 

てんとう虫のピカピカの赤や、もうすぐ会えるホタル!せみや、声のきれいな鈴虫。恐くない虫もたくさん。

暑くなってくると、だんだん生き物の気配が強くなってきます。どうか今年も、あまり恐い目に合わずにうまく付き合っていけたらいいな、とさっそくドキドキしています。本気で。

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すいかとクラゲとタケコプター

 

お仕事が、またしばらくお休みになりました。それで、もうひとつの方のお仕事に集中して一段落させて、投函がてら出掛けることにしました。

今日は一日雨の予定。傘ごしの雨音を聞きながらゆっくり歩きます。シャーっと時おり走る車のタイヤが滑る音がくすぐったい。せっかくなので眼鏡をカーディガンのポケットにいれて、世界をぼやけて楽しみました。

 

封筒を入れようとしていたら、向かいから郵便局の赤い車が来て止まりました。ぺこ、と会釈したら、ちょっと不機嫌そうなおじさんだったので、邪魔にならないように急いでポストにいれました。歩きながら振り返り振り返り見ていたけれど、無事私の封筒もつまれて遠ざかっていきました。

このあいだツツジが咲き始めたと思ったのに、もう街路樹が大きく枝葉を伸ばしてる。雨の中で緑が膨らんでいるように感じました。お仕事がお休みになると、ついつい動かなくていいような気がして、本当はよくないんだけど、反動なのか、どうにもおっくうになる。今日はすぐ帰る予定だったけど、歩き始めたら、傘の中で雨の音が気持ちが良かったので、運動のかわりにもう少し歩くことにしました。

 

すると、可愛い傘をいくつか発見。ひとつは真っ赤なすいかで、種がぴちぴち、緑と黒の縁取りもちゃんと、すいか。

それから、クラゲ。まあるいかたちに、淡い水色のグラデーションがほんものそっくりでした。

びっくりしたのは、タケコプター!ドラえもん色の傘の上に、10センチくらいのタケコプターがちゃんと乗っていて、眼鏡の男の子が得意気にさしていました。

 

私は何だか嬉しい気持ちになりながら、ちょっと遠回りして近くのケーキ屋さんでケーキとシュークリームとプリンを買って、おおいに満足して劣等感なく納得しておうちに帰りました。

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立ちつくすロバ

ロバのお話を書いているの。それで、少し前のことだけど、動物園にロバに会いに行くことにしました。

動物園は、思いのほか空いていて穏やかな時間が流れていました。小さな子供や、それから年輩の方たちがトラや猿を夢中で見ていました。

 

動物園には独特の時間が流れてる気がします。3時を少し回ったころ。気だるいような白い日差しに、音も吸い込まれるようでした。干し草や、生き物の匂いが漂って、時おり鳴き声が聞こえます。私はどきどきしました。いまはお洋服を着て道をすんと歩いてるけど、それはそんなふりをしているだけで、自分も一ぴきの動物なんだわ、と思いました。

「ロバ、ロバ、、」

入り口で地図をもらったけれどかばんに入れてしまった。以前来たとき、このあたりにいたと思うけど、、探しながら歩きます。

ミニチュアポニーをテレビで見て、なんとも可愛らしく飼いたい、、と調べたことがありました。それから「ペリーヌ物語」を借りて見て、パリカールという名前のロバほどいい生き物はいないんじゃないかと、ロバがいいと思うようになりました。
それで飼えないかこっそり調べてたけれど、主人に「だめだよ」と言われて諦めました。

なんであんなに働きもので、なんであんなに悲しそうな目に感じるんだろう。ロバ、ロバ。どこかしら。

 

・・いた。

見つけて、思わず立ち止まりました。

ロバは、ただ、立ってた。

亀の池の奥、見渡しても、お客さんも飼育員さんも誰もいない。

(ロバ、、)

ロバはじっと地面をみていました。そこは他と気配が違って感じられました。

ロバは、肘と膝をつっぱってじっと立っていました。

私はじっとロバを見つめて、それからお礼を言って帰りました。

 


夜、主人にロバに会いに行ったことを報告しました。

「いったい、どんな風に感じるのかな。だって、ずっと、一歩も動かないんだよ。ただ立って、地面をみてた。日の影をみて、もう四時か、とか、まだ四時かって思うのかな。」

すると主人は言いました。

「ちがう。ちがう。きっと。また四時だって思うんだよ」

「・・・!!」

今日もロバ、立ってるのかな。また四時だ、って思うのかな。。原稿用紙との間に、あのロバと、その先の地面が浮かんで見えて私はなかなか書き出せませんでした。

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エアトランプ

ちょっと前のこと。たまたまつけたテレビでトランプゲームをしていました。ババヌキみたいなもので、ステーキ、とかトンカツとか、美味しそうなものをカードに書いて引き合って、ペアになったらそれが食べられる。

私はその時おなかが空いていたので、カードを引けたらごちそうが食べられるというのをじーっと見ていました。それが印象的だったので、晩ごはんのあとにふと思い出して

「あれ、美味しそうだったよね」

と言いました。

「どれ?」

「ちょっと前、ほら、カードしてたでしょ。お肉とか、ババヌキしたら食べられるやつ」

「ああ、やってたね」

ずいぶん前のことじゃない、しかもごはん食べ終わったばかりなのにと主人は笑いました。

「ね、一緒にトランプやろうか」

私は何だか楽しくなって言うと、

「ふたりで?ババヌキ?」

主人は目を丸くして、それからにこっと笑いました。

「あれは揃ったらカード捨てるでしょ?それなら、最後のぶぶんだけでいいんじゃない?」

「最後のぶぶん?」

「君が、二枚、僕が三枚ね。一枚はババ。面倒くさいから本物のカードは要らないでしょ。どれがどれか頭の中で覚えててね」

「・・・!!分かった!」

そして向かい合って、透明のカードをきゃあきゃあ引き合いました。

私は見えないババを引いてしまって負けました。

「もう一回、やろ!」

「いいよ」

わくわくもう一勝負行い、、主人は言いました。

「もう一回?」

「・・・もう、いいや」

楽しいけど、一瞬で終わるし、いつまでもごちそうは出てこない。

「でもさ、これすごいね」

「楽しかった?なら良かった」

主人はコーヒーをいれに立ち上がりました。

「エアトランプ。すごいアイディアじゃない!」

「きっとエア将棋もできるよ。最後の部分だけくらいなら。」

・・・どこに何を置いたか一瞬で忘れる私にはちょっと難しいかな、、でもエアで遊べるいろいろがあるなんて素敵!と思って嬉しくなっていたら、主人は続けて言いました。

「自分一人だけのときはエアダーツも出来るよ」

「え!・・・やってるの?」

「うん」

それはすごい。。コーヒーを頂きながら主人が違ってみえました。

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冷蔵庫をあけたらなんにもない。仕方なくお買いものにでることにしました。出不精な私は、ついでにこれも、あれも、と用事をまとめてかばんに詰めました。

 

日傘をさして、外に出たら、晴れているのにさあーっと雨が降ってきました。久しぶりの天気雨だわ、と嬉しくなりました。景色がキラキラして、雨もよく見えるし、わくわく歩いてお店に向かいます。

食材をたくさん買ったら予定よりも重たくなってしまったので、ほかの予定を変更していったん家に帰ることにしました。

「ただいまー」

「あれ、早かったね」

「たくさんになっちゃったから、置きにきたの」

「そう」

「あのね、天気雨だよ。きれいだった」

「へえ、良かったね」

雨粒の話をしながら選んだ野菜やお肉を冷蔵庫に入れていたら、

「わあ、みて。虹が出てるよ」

と主人が言いました。

「え!どこどこ」

「ほら、僕の部屋の窓からよく見えるよ」

それで急いで見上げたら、とても大きな虹でした。山の麓から端まで、まあるくちゃんとかかっていました。

「すごい!大きいね」

二人でしばらく見上げていました。

でも見ている間に雨がだんだん強まって、虹は薄れていきました。私は日が暮れないうちに急いでご用事に向かいました。

 

移動中また降ったり晴れたり、淡く虹がかかったり消えたりしました。主人もお部屋で見てるかな、と傘をくるくる回しました。

帰り道、もう虹は見えなかったけど、(あそこにちゃんと、あった)と思ったら、何だかそれだけで嬉しい気持ちになりました。

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