不思議な人たち
注文頂いていた絵を届けて、次のお仕事へ向かう。堀川御池から、ぐるっと四条河原町まで時間があったので歩くことにした。昨日は雪が降ったけれど今日の夕暮れは少しだけ春の気配がして背中にちょっと汗をかいた。いつもと違う道は少しドキドキした。
横断歩道の信号待ちで、ふと緑色が目の端に入った。
(?)
右隣の男性が右手にパセリ、左手に携帯電話を持っていた。
(パセリ?)
しかも、花束を持つように軽い感じで持っている。(まさか、パセリを持って待ち合わせ・・)携帯電話を操作しながらパセリも軽く揺れていた。(コックさんかな。なんだか変だな。お使いかな。。)青信号になって渡る。
渡ったら、裸足の男の人がいた。
(!?)
靴下を履いてないだけではなくて、靴も履いていない。上半身は黒いジャケットを着て普通の格好をしている。(どういうことかしら)彼も携帯電話に夢中だった。(寒くないのかな。誰かが靴を持ってきてくれる、とか・・)それにしても裸足!!苦行だ。なのに、道行く人は気づいていないようで私は不思議でならない。
裸足の彼が通り過ぎると、視界の端でつまづいた人がいた。
小柄なおじさまが慌てて体勢を整えて歩き出したところだった。(何か、変だ・・・)よく見てみると、すぐにわかった。
たたんで持っている傘が、非常に長い。
引きずりそうな傘の柄が胸のあたりまである。あんなに長い傘だったら転んでも仕方ない。パラソルなんじゃないかしら。。重たくないのかしら。。
(今日は変った人をよく見るな)
いろいろ面白かったので、主人にさっそく報告する。
「君もそんな人ばかり夢中で見てたら、はたから見たら同じように見えるよ。こけないように気をつけなさい」
と返信が来た。
まだ約束の時間まで早かったので、東急ハンズに入った。ちょっと前に、お母様が素敵な石けんを使っていた。布用の洗濯石けんで、それで洗うと、どんな汚れもみるみる白くなるという。ここにあると言っていたから、買ってみよう。エスカレーターで3階に上がる。
(えーと。なんていう石けんだったかしら)
ピタ、と足が止まった。名前がどうしても思い出せない。
(メロディ、じゃなくて、そらいろ、じゃなくて・・)
ぐるぐる探していると、感じのいいお店の人が「何かお探しですか」と声をかけて下さった。
「ありがとうございます、あの、えーと・・石けんを探しているのですが」
「何用の石けんでしょうか」
「何でも洗えるそうなのだけど、名前が思い出せなくて」
「はあ。」
「たしか、男の子が青空で口ぶえを吹いているような石けんだったと思うのですが・・」
というと、お店の人が吹き出した。
「すてきですね」
「すみません・・なければ無いでいいのですが」
「探してみましょう」
私はもう、申し訳なくて恥ずかしくて帰りたくなってしまった。けれど、1分後、親切な店員さんが笑いながら正しい石けんを持ってきてくれた。
石けんの名前は「ウタマロ」だった。
私もじゅうぶん変な人だった。あーあ・・