魅惑の骨せんべい

「あれ、美味しそうだね」

お仕事の帰り道、主人がお店の前に並べられた何かに目を止めました。これは極めて珍しいこと。私はもちろん嬉しくて、ものを見るより先に

「なあに?買いましょう、買いましょう」

と言いました。

 

普段、あまりものを欲しいと言わない主人が言うので何かなと思って見たら、鶏皮のおせんべいでした。そして、「きみはきっとこっちの方が好きたよ」と、私には魚の骨のおせんべいを持ってきてくれました。

「疲れたーおなかすいたよー」

お家に帰って、ひととおり身支度をしたら、くたくたになってしまってごねていると、主人がカサカサ楽しい音を立てました。

「これ、ちょっと食べようよ」

「そうしよう」

魚の骨のおせんべいは、ぽりぽり、びっくりするほど固くて、お魚の味がしっかりついていました。

「美味しいねぇ」

お皿に並べてみると、何種類かのお魚が入ってるようです。

「ね、なんだかきれいだよ」

手にとって明かりにかざしてみると、琥珀色の小さなかけらに、骨がちゃんと見える!

「すごいね。これたくさん食べたら、骨が強くなるかな」

「爪も歯もなるんじゃない」

私に先におやつをくれてから、主人は昼間に作っておいてくれたシチューを温めてくれます。

「あのさ、骨が強いのはだいじよね」

「そりゃそうだよ」

ぽりぽりかじりながら、私はさっそく自分の骨が強くなっていくのを空想して嬉しくなりました。もし転んだりどこかにぶつけてヒビが入ってしまっても、ちゃんと治って元気にまた歩ける様にしないと。私はちょっと意地になっておせんべいを食べました。

でも、ちょっとだけ、鶏皮のおせんべいはどんなかしら、と頭を横切りましたが、数少ない主人のお楽しみだからあれはがまん、と美味しくお魚の骨を頂きました。

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